曖昧さの中で生きていること
2022.11.29
芸術の秋というわけでもなく、11月の頭に浦東美術館へ展示会を見に行きました。
徐冰さんの作品「引力劇場」。
1600個ものアルミニウム合金板の文字で構成された、巨大なインスタレーション。
美術館の5階分の空間を貫いていました。
床面は鏡になっていて、さらに不思議な感覚へと連れて行かれます。
作品解説の中のフレーズ「Between “seeing”and”reading”」
条件反射的になんて書いてあるのか、読みたいと目を這わせるのですが、
見慣れない、そして歪んでいる書体を読めるはずもなく、
柄、図案、模様のように捉えて、全体の造形の面白さをただただ堪能している自分に気づきます。
最上階からの吸い込まれるような眺め。
この作品は、階を移動するごとに視点が変化していく面白さと不可解さがあります。
「言葉」の持つ曖昧さ、もどかしさ。
日常で意外と感じている気持ちと重ね合わさりました。
同じ言葉を使った話でも、それぞれの視点からの解釈で、全く違う意味になってしまうこと。
完璧に何かを理解することは出来ないこと。
当たり前だけど、無意識の中で処理して、気づかないふりをしている事実。
こういった感覚を呼び覚ましてくれるアートの面白さを再認識させてくれた作品でした。